インフル陰性なのに39℃の高熱…もしかして「ライノ・エンテロウイルス」かもしれません

どうも、うま先生です。

2025年シーズンも、インフルエンザがしっかり流行しています。

ただ、外来でこんな声をよく聞きます。

「コロナもインフルも検査してもらったのに、どっちも陰性でした。

でも39℃の熱が続いて、のども激痛で…本当にただの風邪なんですか?」

実は、コロナでもインフルでもない、別のウイルスが原因になっていることが少なくありません。

今年、私自身もおそらくそれにかかりました。


私もかかった「謎の高熱」…実はライノ・エンテロ?

今シーズン、私も4日間ほど 39〜40℃の高熱 が続きました。

日中はまだマシなのですが、夜になると毎晩ガタガタ震えるような悪寒。

医学的にいうと、朝〜昼は体内から出ている**ステロイドホルモン(コルチゾール)**が炎症を少し抑えてくれます。

そのため「昼間はまだ動けるけど、夜になると一気に熱と悪寒がつらくなる」というパターンが起きやすいんですね。

さらに今回は、のどの「のどちんこ」(医学的には口蓋垂(こうがいすい))が赤く腫れあがる口蓋垂炎になりました。

常にのどの奥に何かが張り付いているような違和感があり、咳払いをしても取れない。

咳払いをすると今度は激痛が走る…。なかなかの不快さでした。

コロナ・インフル両方陰性。

全身症状は強いのに、よくある検査では原因がわからない——。

こうしたケースで、今シーズンよく名前が挙がるのが**「ライノ・エンテロウイルス」**です。


インフルと同じくらい出ている「ライノ・エンテロウイルス」とは?

2025年シーズン、インフルエンザ(特に話題のサブクレードK)は、例年より少し早めの秋から立ち上がって、そのまま冬にかけて流行しています。

一方で、感染症発生動向調査のウイルス検出状況を見ると、インフルと同じくらいの頻度で検出されているウイルスがあります。

それが、

**「ライノ・エンテロウイルス(Rhino/Enterovirus)」**です。

名前がややこしいのですが、実は1つのウイルスではなく、

  • ライノウイルス
  • エンテロウイルス

という、近い仲間のウイルスがセットで報告されているイメージです。

PCRなどの遺伝子検査では、両者を完全に分けるのが難しいため、「Rhino/Entero」とひとまとめで出てくることが多いのです。


ライノウイルス:鼻かぜの代表選手

**ライノ(rhino)**は「鼻」という意味。

その名の通り、ライノウイルスは 「ザ・鼻かぜ」 の原因として有名です。

特徴

  • 鼻水・鼻づまりが中心
  • のどの違和感や軽い咳
  • 熱が出ても 38℃未満の微熱程度 のことが多い
  • 基本的には自然に治る風邪

「鼻風邪か〜」で済むことが多く、インフルのような高熱や全身の筋肉痛はそれほど目立ちません。


エンテロウイルス:症状が強めの“しんどい風邪”も

一方、エンテロウイルスは少し顔ぶれが多彩です。

  • 手足口病
  • ヘルパンギーナ
  • 夏かぜ
  • 気管支炎
  • 髄膜炎 など

さまざまな病気の原因になります。

エンテロウイルスによる感染症の特徴

  • 高熱(39℃前後)が数日続くことも
  • のどの強い痛み
  • 筋肉痛・全身倦怠感
  • 場合によっては頭痛や嘔吐、髄膜炎症状

小さな子どもの「手足口病」はご存じの方も多いと思いますが、

実は大人がかかるとかなりしんどい病気です。

私自身も、子どもからもらって数日寝込んだことがあります。

今回の私のように、

  • インフルと同じような高熱・全身症状
  • のどの激痛や口蓋垂炎
  • でもインフル・コロナは陰性

というパターンは、エンテロウイルスの一部が原因だった可能性が高いと考えています。


なぜ「ライノ・エンテロ」は検査でわからないの?

インフルやコロナには、病院で使える15分程度の迅速検査キットがあります。

しかし、

  • ライノウイルス
  • エンテロウイルス

に関しては、同じような手軽な抗原キットは一般診療ではほとんど使えません

PCRなどで詳しく調べることはできますが、

  • 全員に行うにはコストや手間が大きい
  • 診断がついても、結局は対症療法が中心

といった理由から、一般的な外来ではそこまで検査を行わないことが多いのです。

そのため、

「インフル・コロナ陰性だけど、けっこうしんどい風邪」

= 実はライノ・エンテロウイルス

というケースが、相当数ありそうだと考えられます。


コロナ・インフル陰性でも「ただの風邪」とは限らないけれど…

ここで大事なのは、

  • インフル・コロナ陰性 = 何でもない ではない一方で、
  • ほとんどのライノ・エンテロ感染は自然に良くなる

というバランス感覚です。

受診の目安

こんなときは、必ず医療機関を受診してください。

  • 38〜40℃の高熱が 3日以上続く
  • 意識がボーッとしている、ぐったりしている
  • 息苦しさ、胸の痛みがある
  • 水分がとれず脱水が心配
  • 強い頭痛・嘔吐・首の痛み(髄膜炎が心配な症状)

一方で、

  • 高熱はあるけれど、解熱剤である程度おさまる
  • 少しずつ食べたり飲んだりはできる
  • 咳やのどの痛みはあるが、呼吸はそこまで苦しくない

といった場合には、**「つらいけど、時間とともに治っていくウイルス感染」**の可能性が高くなります。


まとめ:インフルだけが「冬の主役」ではない

  • 2025年シーズン、インフルエンザ(サブクレードKなど)が流行していますが、 同じくらい「ライノ・エンテロウイルス」も検出されている
  • コロナ・インフル陰性でも、
    • 強いのどの痛み
    • 39℃前後の高熱
    • 筋肉痛・倦怠感 などがあれば、こうした別のウイルスが原因のことも多い
  • 多くは自然に治るものの、重症のサイン(意識障害・呼吸苦・強い頭痛など)があれば必ず受診を

インフルやコロナだけでなく、

**「冬に流行るウイルスたちの顔ぶれ」**を知っておくと、

検査結果に振り回されずに、自分や家族の症状と冷静に向き合えるようになります。

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