肺炎球菌性髄膜炎の抗菌薬治療

肺炎球菌性髄膜炎の抗菌薬治療

エンピリックにはバンコマイシン+セフトリアキソンで良かったのは覚えているけど、その後ってどうなるんだっけ?と実際に経験してみないとなかなかしっかり勉強しなかったので、まとめてみました。

【治療概略】

  • 抗菌薬に感受性もしくはIntermediateの場合
    • ペニシリンとセフトリアキソンは同等に有効かもしれない
    • 薬物動態を考慮するとCSFレベルからはセフトリアキソンの方が好ましい
  • 初期治療
    • バンコマイシン+セフトリアキソン
      • 感受性結果が出るまでのEmpiric therapy

• • 併用はウサギのモデルでは相乗的に働くことが示されている

ペニシリンGのMICによる治療方針分類

Definitive治療はペニシリンと第3世代セフェムのMICによって3段階に分けられるそうです。

だんだん有名になってきましたが肺炎球菌のMICブレークポイント(S,I,Rの判定)は髄膜炎か非髄膜炎かで全く異なるので注意しましょう。

【PCGと第3世代セフェムのMICでの分類】

  • MIC < 0.1 mcg/mL (IDSA グレード A-III):
    • ペニシリンGまたはアンピシリンを投与。
    • 代替薬としてセフトリアキソン、セフォタキシム、またはクロラムフェニコールを使用可能。
  • MIC 0.1-1 mcg/mL:
    • セフトリアキソンまたはセフォタキシムを投与 (IDSA グレード A-III)。
    • 代替薬としてセフェピムまたはメロペネムを使用可能 (IDSA グレード B-II)。
  • MIC ≥ 2 mcg/mL (またはセフォタキシムorセフトリアキソンのMIC ≥ 1 mcg/mL):
    • バンコマイシンとセフトリアキソンまたはセフォタキシムを併用 (IDSA グレード A-III)
    • セフトリアキソンのMICが2 mcg/mLを超える場合は、リファンピン(600 mgを静注または経口で12時間ごとに投与)の追加を検討

• • 代替薬としてガチフロキサシンまたはモキシフロキサシンを使用可能(ただし、全身用ガチフロキサシンは米国では入手不可)(IDSA グレード B-II)。

抗菌薬各論とステロイドについて

ここからは各薬剤の用量や注意点などを記載します。

【薬剤各論】

  • ペニシリン
    • ペニシリン感受性(MIC≦0.12μg/mL)の時に第一選択
    • アンピシリン
      • 2g4時間毎
    • ペニシリンG
      • 25万単位/kg/日を6回に分けて投与
  • 第3世代セフェム
    • ペニシリン耐性株で第3世代セフェムのMIC<1.0μg/mLの時
    • セフトリアキソン
      • 2g12時間毎
    • セフォタキシム
      • 2g6-8時間毎
  • バンコマイシン
    • 第3世代セフェムのMIC≧1.0μg/mLの時
    • 第3世代セフェムと併用
    • トラフ15-25μg/Lを目標
  • メロぺネム
    • βラクタムの代替薬
    • 痙攣のリスクが上昇するため一般的には推奨されない
  • セフェピム
    • セフトリアキソン、セフォタキシムの代替薬
  • リファンピシン
    • 併用のエビデンスは乏しい
    • 600mg12時間毎をバンコマイシンと併用
  • デキサメタゾン
    • 抗菌薬の開始前(10-20分)もしくは同時に0.15mg/kgを6時間おきに点滴静注
    • 神経学的後遺症や聴覚の後遺症を減少させることで多くの利点があるが致死率を有意には低下させない
    • 低所得国ではHIV感染などの影響か死亡率低下にはつながらなかった
    • 治療期間
      • 成人で肺炎球菌、小児で肺炎球菌もしくはインフルエンザ桿菌が同定された場合4日間継続する
      • 4日間以上は継続しない
    • バンコマイシンとの併用について
      • バンコマイシンの髄液移行性が低下するという報告がある
  • βラクタムアレルギーの時
    • 下記の表より使用できる抗菌薬はクロラムフェニコール、リネゾリド、バンコマイシン、レボフロキサシン、(モキシフロキサシンは内服のみ)
    • 1型アレルギーや致死的なアレルギーが予測される場合以外はβラクタムを使用
  • バンコマイシン
    • 血中から脳脊髄液への移行性が不安定である、デキサメタゾン併用によって髄膜の炎症が低下し脳脊髄液の移行性を低下させる懸念があり治療失敗につながる懸念がある
  • 一方でデキサメタゾン併用下でも直線的に血中バンコマイシン濃度と脳脊髄液濃度は相関し、バンコマイシンの血中濃度測定を行い血中濃度を十分維持することによって脳脊髄液濃度が維持されたとする報告もある(バンコマイシンは負荷投与15mg/kg後、60mg/kg/日持続静注)ことから単剤でも治療可能かもしれない

感想

ざっくりPRSPが多いけどもしペニシリン感受性だったらペニシリンGもしくはアンピシリンに変更可能までは覚えていたけど、ペニシリン耐性だったらセフトリアキソンとバンコマイシンをどうすればいいのかまでは覚えていませんでした。

薬剤のMICによってシンプルに分類できますがペニシリンがMIC=1を含むのに対して、第3世代セフェムはMIC=1は含まないところが若干こんがらがりますね。

セフトリアキソン単剤というパターンがあるのと、菌種が判明してPRSPならバンコマイシン単剤でも良いのではと思いましたが、そこは併用療法でのシナジー効果があることやバンコマイシンの髄液濃度が確実に上がるか不明なことなどから併用継続なのですね。

また髄膜炎時はセフェピム、メトロニダゾール、メロぺネムなど脳症・けいれんリスクが上昇する薬剤は使いにくいのであくまで代替薬のようです。

ステロイドは投与のタイミングが難しいですね。他の感染症も鑑別に上がる中、よっぽど疑わない限りEmpiricに開始するのは勇気が入りそうです。

タイトルとURLをコピーしました