「胸の音を聞かせてください」
診察でそう言われた経験、誰にでもありますよね。
でも実際のところ――
医者は聴診器で何を聞いているのか?
「それで何がわかるの?」と思ったこと、ありませんか?
今日はその疑問に、医者として本音でお答えします。
聴診で聞こえる2つの音とは?
胸の音から聞こえるのは、大きく分けて 心臓の音 と 肺の音(呼吸音) です。
心臓では「ドクン、ドクン」という鼓動音を、
肺では「スーッ、ゴロゴロ」といった呼吸の音を聞いています。
定期診察のときにも聴診することがありますが、
「症状がないのに毎回聞く意味があるの?」と思う人も多いかもしれません。
症状がなくても聴診する理由
実は、症状がなくても聴診で見つかる病気 がいくつかあります。
代表的なのは次の2つです。
- 大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)
心臓の弁が狭くなり、血流の音が「ブー」という雑音になります。
比較的高齢者に多い病気で、音が大きいので聴診で気づきやすいです。 - 喘息や肺気腫(COPD)
息を吐くときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音がします。
特に高齢の男性では、症状を自覚していないケースもあります。
この2つは、聴診だけで異常に気づける数少ない病気です。
聴診で“わからない”ことも多い
一方で、聴診でわからないこともたくさんあります。
例えば、
- 心不全(心臓が弱っているかどうか)
- 心筋梗塞
- 心臓の動きの強さ
こういったものは、音だけでは診断できません。
実際には 心エコー検査 や 心電図 が必要です。
聴診器で「心臓の音が正常ですね」と言われても、
「心臓が元気!」とは限らないのが実際のところです。
聴診の本当の役割
では、なぜ今でも聴診を行うのか?
それは、
- 大動脈弁狭窄症や喘息などの早期発見
- “診てもらった”という安心感
この2つが大きいと思います。
実際に、聴診をしてもらうと患者さんの満足度が上がる、
という研究結果もあります。
つまり、医療の原点である「手当て」 の一つなんです。
医師の本音:どのくらいの頻度で聴診する?
私自身は、
初診のときや、60歳以上・高血圧などリスクのある方には定期的に聴診します。
ただし、毎回必ずというわけではありません。
症状の有無やリスクに応じて、年に1回〜半年に1回くらいの頻度で十分だと考えています。
診察時間の中では、
「食事・運動・薬の管理」などの話の方が重要なことも多いです。
だからこそ、聴診と会話のバランス が大事なんですね。
まとめ:胸の音からわかること・わからないこと
| 項目 | 聴診でわかる | 聴診ではわからない |
|---|---|---|
| 大動脈弁狭窄症 | ✅ 音で発見できることがある | |
| 喘息・肺気腫 | ✅ 「ヒューヒュー」でわかる | |
| 心不全・心筋梗塞 | ❌ 心電図・エコーが必要 | |
| 心臓の動きの強さ | ❌ 個人差が大きく判断困難 |
結論
胸の音からわかることは限られています。
それでも聴診には、
- 病気を早期に見つけるチャンス
- 診察を受けた安心感
という、大切な役割があります。
そして何より――
「あなたの体を丁寧に診ようとしている」その姿勢 が、聴診の本当の意味なのかもしれません。
