本日は患者さんからよくある質問、「インフルエンザは何日でよくなりますか?」に関して調べてみたので一般の方にもわかりやすく説明したいと思います。
結論
インフルエンザの症状がよくなるまでの時間は年齢と症状の強さによります。
また症状が出てから受診までに48時間以上かかったかどうかも一つの参考になります。
全体的な傾向
- 軽症患者: 比較的短期間(5〜7日)で回復。
- 中等症および重症患者: 合併症や治療開始のタイミングによって回復日数が増加(7〜13日以上)。
- 65歳以上の高齢者: 症状の重症度や合併症の影響が大きく、回復までの時間がさらに長い。
もっと詳しく知りたい方は下記を見てください。
年齢の分け方
年齢層は下記の3パターンに分けて分析しています。
- <12歳
- 小児
- 12歳未満の子ども。
- 12–64歳
- 成人
- 12歳以上64歳以下の成人。
- ≥65歳
- 高齢者
- 65歳以上の高齢者。
症状の強さ
この研究での症状の強さは診察した医師の主観に基づいており明確な定義はなされていません。
一般的には下記のような症状の強さが目安となります。
1. 軽症(Mild)
- 症状の特徴:
- 微熱または熱がない。
- 軽い喉の痛み、咳、鼻水などの軽度な呼吸器症状。
- 倦怠感や筋肉痛が軽度で、日常生活に大きな支障がない。
- 全身症状(頭痛、筋肉痛、疲労など)が軽い。
- 合併症: なし。
- 治療の必要性: 自然経過でも回復する可能性が高く、抗ウイルス薬を必須としない場合が多い。
2. 中等症(Moderate)
- 症状の特徴:
- 明らかな発熱(通常38.5℃以上)。
- 激しい咳、頭痛、筋肉痛、倦怠感があり、日常生活に支障をきたす。
- 全身症状が顕著で、休養が必要な状態。
- 合併症: 軽度の既存疾患がある可能性(例: 喘息、軽度の慢性疾患など)。
- 治療の必要性: 抗ウイルス薬やその他の対症療法が推奨されることが多い。
3. 重症(Severe)
- 症状の特徴:
- 高熱が持続(39℃以上が一般的)。
- 呼吸困難や頻呼吸を伴う激しい呼吸器症状。
- 脱水症状や意識混濁が見られる場合もある。
- 強い倦怠感や筋肉痛により移動や日常生活が困難。
- 肺炎や敗血症のリスクが疑われる場合も。
- 合併症:
- 心疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患などの基礎疾患を伴う。
- 入院が必要となる場合がある。
- 治療の必要性:
- 抗ウイルス薬の使用が推奨され、場合によっては酸素療法や集中治療が必要。
回復の定義
重症度の定義と異なり回復の定義は結構厳密です。
日常生活への復帰といった機能的な回復に重点を置いています。
回復の定義
- 通常の日常活動に復帰できること:
- 患者が以前のように日常生活を支障なく行える状態に戻ること。
- 例えば、学校や職場への復帰、家事や通常の行動ができる状態。
- 主要な症状が軽度または消失していること:
- 発熱(fever)、頭痛(headache)、筋肉痛(muscle ache)が「軽度」または「問題なし」と患者自身が評価すること。
- 「軽度」とは、症状が日常生活に大きな支障を与えない程度を指します。
- 非言語的評価(非成人や小児の場合):
- 非言語的な小児(幼児など)については、筋肉痛や頭痛の評価が難しいため、代わりに「しがみつき(clinginess)」の減少を評価指標としています。
詳細な結果
下記に詳細な結果を示しました。
例えば40歳の方で糖尿病の持病があり、発症から48時間以内に病院を受診をしてインフルエンザと診断されました。
熱が39度くらいあって呼吸困難はありませんが、ご飯を作るなど日常生活は制限された状態です。
そうすると大体7.7日以内に回復するという見込みになります。
✴︎研究データが不足している場合は下記の表にはないので近いデータを参考にしてください。
合併症(Comorbidities)の例
- 心疾患(Heart disease)
- 高血圧、冠動脈疾患、心不全など、心臓に関連する疾患。
- 糖尿病(Diabetes)
- 1型および2型糖尿病などの血糖管理に関わる疾患。
- 慢性呼吸器疾患(Chronic respiratory conditions)
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(アレルギー性喘息など)など。
- 肝疾患(Hepatic conditions)
- 慢性肝疾患、肝硬変、肝炎など。
- 血液疾患(Hematological conditions)
- 貧血や白血病などの血液に関連する疾患。
- 神経学的疾患(Neurological conditions)
- パーキンソン病、脳卒中、アルツハイマー病など。
- 神経発達障害(Neurodevelopmental conditions)
- 自閉症、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達に関連する疾患。
- 過去の脳卒中や一過性脳虚血発作(Stroke or transient ischemic attack)
- 脳卒中や一過性脳虚血発作の既往がある場合。
- 過去1年間に入院歴がある(Overnight hospital stay in previous year)
- 最近1年以内に入院歴があった場合。
<12歳(小児)
軽症(Low Severity)
- 合併症なし(No Comorbidities)
- 発症から48時間以内に受診: 平均 5.1日(95%信用区間: 4.7–5.6日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 5.7日(95%信用区間: 5.2–6.2日)
- 合併症あり(Yes Comorbidities)
- 発症から48時間以内に受診: 平均 5.6日(95%信用区間: 5.5–6.9日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 6.1日(95%信用区間: 6.1–7.9日)
中等症(Medium Severity)
- 合併症なし
- 発症から48時間以内に受診: 平均 5.6日(95%信用区間: 5.2–6.1日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 6.8日(95%信用区間: 5.7–6.9日)
重症(High Severity)
- 合併症あり
- 発症から48時間以内に受診: 平均 7.7日(95%信用区間: 6.8–8.8日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 8.8日(95%信用区間: 7.6–10.2日)
12–64歳(成人)
軽症(Low Severity)
- 合併症なし
- 発症から48時間以内に受診: 平均 5.7日(95%信用区間: 5.3–6.1日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 6.3日(95%信用区間: 5.8–6.9日)
- 合併症あり
- 発症から48時間以内に受診: 平均 6.9日(95%信用区間: 6.2–7.7日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 7.7日(95%信用区間: 6.8–8.8日)
中等症(Medium Severity)
- 合併症なし
- 発症から48時間以内に受診: 平均 6.3日(95%信用区間: 5.9–6.6日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 7.0日(95%信用区間: 6.6–7.5日)
- 合併症あり
- 発症から48時間以内に受診: 平均 7.7日(95%信用区間: 7.0–8.5日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 8.3日(95%信用区間: 7.8–9.6日)
重症(High Severity)
- 合併症なし
- 発症から48時間以内に受診: 平均 8.0日(95%信用区間: 7.3–8.8日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 9.7日(95%信用区間: 8.7–11.2日)
≥65歳(高齢者)
軽症(Low Severity)
- 合併症なし
- 発症から48時間以内に受診: 平均 7.4日(95%信用区間: 6.5–8.6日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 8.4日(95%信用区間: 7.2–9.7日)
- 合併症あり
- 発症から48時間以内に受診: 平均 9.2日(95%信用区間: 8.2–10.8日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 11.6日(95%信用区間: 10.0–12.5日)
中等症(Medium Severity)
- 合併症なし
- 発症から48時間以内に受診: 平均 8.3日(95%信用区間: 7.3–9.6日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 10.3日(95%信用区間: 9.0–11.3日)
重症(High Severity)
- 合併症あり
- 発症から48時間以内に受診: 平均 11.7日(95%信用区間: 9.9–13.5日)
- 発症から48時間以降に受診: 平均 13.1日(95%信用区間: 11.2–15.1日)
まとめ
軽症で合併症がない場合は回復が早い(約5〜6日)
重症で合併症がある場合、高齢者では特に回復に時間がかかり、最大で13日以上
まとめると大体上記のような傾向があることがわかります。
最短でも5日最長だと2週間程度と思っていただいて良さそうですね。
辛いインフルエンザの症状少し目処が立つとがんばれますでしょうか。参考になれば幸いです。
参考文献

Butler CC, van der Velden AW, Bongard E, et al. Oseltamivir plus usual care versus usual care for influenza-like illness in primary care: an open-label, pragmatic, randomised controlled trial. Lancet. 2020;395(10217):42-52. doi:10.1016/S0140-6736(19)32982-4